SOC(システムと組織のコントロール)には、SOC 1、SOC 2、SOC 3の3つのレポートがあり、それぞれ注目点や目的が異なります。本ガイドでは各レポートの扱う範囲や対象、貴社の運用やデータセキュリティにどう影響するかをわかりやすくまとめました。経営者やIT担当者、監査に携わる方々はもちろん、SOCの基礎を知りたい方々にとっても参考になる内容です。
本記事を通じて、SOC 1、SOC 2、SOC 3の要点と相違点をしっかり把握し、貴社に最適なコンプライアンス戦略を検討する手助けになれば幸いです。
サイバー空間を守る上で要となる「Control for Service Organisation(COS)」は、オンライン事業の防御力を強化する仕組みです。COSレベル1、2、3を補完的に取り入れることで、デジタル企業やデータ保存基盤を守り、稼働時間の安定や処理の信頼性、データの安全性、顧客データの守りをより強化する重要な枠組みとなります。
この実務ルールは、世界的に認知度の高い組織である米国公認会計士協会(ACPAA)によって策定されました。サービス提供企業の内部セキュリティ手順を評価・承認する上で欠かせない存在で、高度な機密データを安全に扱い、厳格なプライバシー基準を守るためのプロセスとして重要と認識されています。
COSを理解する:COSレベル1の要点
COSレベル1は、サービス提供者の内部オペレーションのうち、顧客の財務情報の正確性に影響する部分に重点を置き、COSガイドラインの初歩的な理解をもたらします。要するに、財務関連のタスクと、それを正確かつ信頼できる状態で管理するシステムを対象としています。
次の段階:COSレベル2の概要
COSレベル2は、信頼サービス原則(セキュリティ、稼働時間、処理の信頼性、情報プライバシー、機密性)に合致した機能領域に着目します。特にデジタル企業やクラウドサービス事業者など、顧客データを取り扱う企業には不可欠なレベルです。
最上位:COSレベル3の概要
COSレベル3はCOSレベル2と類似していますが、一般公開できるレポートを含む点が特徴的です。通常は秘密保持契約下となるレベル2のレポートに対し、レベル3では広く公開するためのレポートが提供されます。
COS原則の重要性
今日のデータ中心の世界では、COS基準に準拠する意義は非常に大きいです。企業としてデータプライバシーを守る姿勢を示すだけでなく、堅固な対策を導入するきっかけになり、コンプライアンスそのものへの信頼と同時に、企業が導入しているセキュリティ対策への安心感にもつながります。
今後の道筋
COS基準に精通し、それぞれのレベル固有の要件や守りの手法を理解することは簡単ではありません。しかし、各レベルを詳しく学んで特徴を把握し、企業に合った段階を選択すれば、適切なCOS運用を定めることができます。ここでは、レベル1から2、そして3へとそれぞれの要点や準拠の度合いを整理しながら、どのCOS対応が最適かを考えるきっかけを作ります。ぜひ詳細を探ってみてください。
データを守る方法としてService Organization Control(SOC)認証がありますが、SOC 1、SOC 2、SOC 3はそれぞれ内容が異なり、初めての方にはわかりにくい場合があります。本記事では、そうした複雑さを整理し、SOC認証の特徴を深堀りします。
SOC認証を理解する
SOC認証は、一括りではなくSOC 1、SOC 2、SOC 3の3部門に分かれる枠組みです。それぞれが着目点や基準、責務を異にしており、企業のビジネスプロセスやデータ管理手法を多角的に検証します。
たとえば、SOC 1は財務関連の指標に影響するリーダー層の統制に焦点を当てます。一方、SOC 2は非財務分野のセキュリティ、アクセス、データの信頼性、機密性、プライバシー方針を扱います。最後にSOC 3はSOC 2をベースとしつつ、一般に公開できるかたちでまとめられています。
SOC認証に出てくる用語を整理する
SOC認証を正確に把握するには、以下の主要用語を理解しておくことが大切です:
SOC認証の概要
以下の比較表は、SOC 1、SOC 2、SOC 3の違いをまとめたものです。
SOC Category | Primary Emphasis | Target Viewers | Public Expose |
---|---|---|---|
SOC 1 | 財務管理の統制 | 企業の監査担当者 | いいえ |
SOC 2 | セキュリティ、アクセス、データ信頼性、機密性、プライバシー | 経営者、規制当局 | いいえ |
SOC 3 | SOC 2に準拠 | 一般公開対象 | はい |
SOC認証の進め方
SOC認証は、一律で決まった方法ではなく、サービス事業者が提供する内容により種類が変わります。例えば、データを扱うサービス事業者なら、財務管理用にSOC 1を、セキュリティ目的にSOC 2も必要となる場合があります。
つまり、SOC認証を深く理解するには、各タイプの特徴や重点事項を把握することが重要です。関連する用語とあわせて把握すれば、どのSOC認証が自社に必要かを見極めやすくなり、事業の確実性や法令順守を支援します。
財務的な守りに特化した「Control and System Security 1(CSS 1)」は、企業内部の統制力を検証する仕組みです。主に補助的サービスを担当する企業が正確な財務取引を行えているかを証明することを目指します。これは、SSAE 18という米国の公認会計士団体が示す基準に基づいています。
CSS1では、企業が財務情報をしっかり守れるかを評価するため、とりわけ給与処理や金融仲介、データセンター運営といった分野での些細な不備による財務記録の信頼性低下を防ぐことに注力します。
CSS1の二つの報告書タイプ
CSS1レポートの主な要素
企業がCSS1に準拠するには、財務記録を一貫性と正確さをもって扱う仕組みを用意する必要があります。具体的には運用手順やリスク評価、リスクへの対策、内外のコミュニケーション、定期的な評価などが含まれます。
財務記録に直接影響を及ぼすサービスを提供している企業であれば、CSS1基準への継続的な取り組みが求められます。これにより顧客と監査人からの信頼を高め、正確な業務遂行の姿勢を示せます。
デジタル化が進む中で、サイバー攻撃からデータを守る重要性が増しています。SOC 2はこうした背景で広く導入されている仕組みの一つです。世界的に評価されるAICPAが策定したガイドラインで、大量のユーザーデータを扱うIT企業などに適しています。
SOC 2が基礎とするのはTrust Services Criteria(TSC)と呼ばれる5つの軸です。
サイバー攻撃やデータ漏洩が相次ぐ現状では、SOC 2準拠は企業が顧客や取引先に対してデータを守る姿勢を示すうえで大変有効です。
SOC 2に準拠することで、潜在的な脅威を把握し、それに対処するプロセスを強化すると同時に、データ保護への取り組みをアピールして信頼関係を深められます。
SOC 2監査は外部の会計士による厳格な審査を必要とします。審査ではTSC項目へどの程度適合しているかを確認し、Type I(システムと統制の設計審査)かType II(一定期間の運用評価)で報告書が発行されます。
SOC 2遵守に向けた初期コストや時間的負担は小さくありませんが、その見返りとしてセキュリティ体制の強化や顧客からの信頼感向上など多くのメリットが期待できます。
サイバーセキュリティやデータの守りについて語るとき、時々耳にするのがSOC 3です。これは何でしょうか。専門用語をなくし、わかりやすく説明します。
SOC 3(Service Organization Control 3)は、会社がどのようにセキュリティ・可用性・手続きの完全性・機密性・プライバシーを扱っているかの概要を示す監査報告書です。SOC 1、SOC 2と合わせて「SOCシリーズ」を構成しています。
SOC 3の役割
SOC 3は、サービス提供企業が社内統制をどう運用しているかについて広いユーザー層へ伝える目的があります。より専門的なSOC 1、SOC 2と違い、SOC 3は内容を一般公開できる形で提示する点が特徴です。セキュリティやデータ保護を大切にしている姿勢を広く示したい企業にとっては、有効な報告書です。
SOC 3の構成
通常のSOC 3報告書は以下の内容を含みます。
SOC 3、SOC 1、SOC 2の違い
どのSOCも、企業の内部統制を証明する点では同じ目的ですが、詳しさや公開範囲が異なります。以下は簡単な対比表です。
SOC Evaluation | User Base | Degree of Complexity | Accessibility |
---|---|---|---|
SOC 1 | 利用企業の経営・監査担当 | 詳細 | 限定的 |
SOC 2 | 利用企業の管理者、規制機関、特定の取引先 | 詳細 | 限定的 |
SOC 3 | 一般の人々 | 概要的 | 制限なし |
つまりSOC 3は、公開範囲が広いという点で特別です。セキュリティやデータ守りに真剣に取り組んでいる事実を、企業が広く示すのに役立ちます。
SOC 3の意義
デジタル社会では、データ侵害やサイバー攻撃の危険が絶えず存在します。企業が機密情報を守るための統制策を確立しているかを顧客やパートナー、一般の閲覧者に証明する手段として、SOC 3が大いに役立ちます。
まとめると、SOC 3は組織のセキュリティとデータ保護の要点をわかりやすく示す監査報告書です。一般公開しやすい形式で作られているため、社外への信頼アピールに効果的です。
Service Organization Control(SOC)は、1992年に米国公認会計士協会(AICPA)がSAS 70を打ち出したことから始まりました。当初はサービス提供企業の内部統制を詳しく調べる目的でしたが、技術やデータ守りの進化に伴い、SAS 70では十分に対応しきれなくなりました。
新しいSOC時代の幕開け
2011年、AICPAはSAS 70に代わる、より広範なSOCフレームワークを導入し、その下にSOC 1、SOC 2、SOC 3という3つのレポートが生まれました。SOC 1は財務部門の整合性に焦点を置き、SOC 2とSOC 3はデータ保護やセキュリティなどに比重をおいています。
2013年にはSOC 2 Type IIが導入され、統制そのものの設計評価だけでなく、一定期間の動作の有効性を調べるように進化しました。2014年には、AICPAのTrust Services Criteriaが導入され、セキュリティ面をより明確に評価できるように整えられました。
現在のSOC
今やSOCレポートは、ベンダーリスク管理に欠かせない存在として広がっています。企業はサービス提供者の統制面を詳しく把握し、リスクを見極めやすくなりました。AICPAはこのフレームワークを常に改良し、業界動向やTrust Services Criteriaを更新し続けています。2017年にはサイバーセキュリティに特化したSOC for Cybersecurityもリリースされました。
こうしてSAS 70から始まったSOCは、時代に合わせて刷新を重ね、サービス提供企業のガバナンスを広範かつ正確に評価する枠組みへと成長しています。
SOC 1:財務面を重視するレポート
SOC 1は、SSAE 18というAICPAが示す基準に準拠した形で、企業が顧客の財務報告に影響を与えるプロセスを適切に管理しているかを評価します。投資家や監査担当、顧客に向けて、財務周りの信頼を示すのに役立ちます。
SOC 2:サイバーセキュリティの基盤
SOC 2は財務以外の領域に重点を置き、主にシステムの安全性やデータの信頼性、機密性やプライバシーに着目します。企業がTrust Service原則にしっかり取り組んでいるかを示すので、顧客やパートナー、投資家などとの信頼関係を築くうえで重要です。
SOC 3:レポートを手軽に公開
SOC 3は、SOC 2の結果を簡易的にまとめたもので、余計な技術的ディテールを省き広く公開しやすくしたレポートです。セキュリティへの取り組みを外部に示したい企業に向いています。
つまり、3種類のSOCレポートはそれぞれ注目点や閲覧対象が異なります。企業は自社のビジネスニーズやデータ特性に合わせて、どのSOCレポートが最適かを選ぶことが大切です。
SOC 1:財務報告を支える内部統制
SOC 1は主に、企業が提供するサービスが顧客側の財務管理にどう影響するかにフォーカスします。給与や取引処理、財務データの扱いなど、財務の正確さが問われる領域で求められます。
SOC 2:セキュリティや運用面を包括
SOC 2は5つの主要項目(セキュリティ、稼働時間、処理の正確さ、機密性、プライバシー)を基盤とし、データやシステムを守る仕組みを幅広くチェックします。クラウド事業者やデータ管理業者などで特に重要視されます。
SOC 3:概要レポート
SOC 3はSOC 2と同じ領域を扱いますが、詳細な監査結果やテスト内容を省いた要約レポートで、外部公開を想定しています。企業の取り組みをシンプルに示したい場合に適しています。
このように、それぞれのSOCレポートは扱う分野がやや異なります。企業の提供サービスやリスク対応の範囲に合わせて、最適なSOCを選んでください。
デジタルで事業を発展させる企業全般
クラウド基盤を使う企業やソフトウェアを提供する事業者、顧客データを管理する企業など、幅広い業態でSOC基準の導入が求められる傾向にあります。顧客の重要な情報を大量に扱う以上、その守りを示す証拠としてSOCコンプライアンスは大切です。
SOC 1が向いているケース
財務データに直接影響するサービスを提供する企業、たとえば給与ソリューションや金融系サービス、財務情報の保管や処理を行う企業はSOC 1が重視されます。データ流出や処理ミスがあれば、財務報告全体をゆがめるリスクがあるためです。
SOC 2が向いているケース
SOC 2はクラウドプロバイダやデータセンター、カスタマー情報を扱う事業者など、財務以外も含むシステム面のセキュリティやプライバシーを求められる場面で有効です。
SOC 3の必要性
SOC 3はSOC 2の簡易版として、セキュリティ体制をシンプルに公開したい企業に適しています。すでにSOC 2を満たしている企業なら、同時または追加でSOC 3を取得し、公的な証明として使いやすくなります。
サイバー攻撃やデータ流出が増えている現代では、堅固なセキュリティ保護が求められます。SOC(システム&組織コントロール)コンプライアンスは、こうした脅威から企業を守るための基礎的な土台と言えます。
SOCコンプライアンスと社内セキュリティの関連
SOCコンプライアンスによって、データの守りやシステムの可用性など広範囲にわたって企業の統制を整えます。これは顧客や投資家、そして規制機関に対してもセキュアな企業であることを示すことに直結します。
SOCコンプライアンスに伴う恩恵
SOCコンプライアンスへの取り組み
データが重要な資源となった今、SOCコンプライアンスへの取り組みは必須といえます。万一準拠していないと、データ漏洩や罰金、信用失墜などリスクが大きくなります。逆に言えば、SOCへの投資がさらなるビジネス機会や顧客信頼の獲得につながるでしょう。
SOC 1の詳細なポイント
SOC 1は、主に顧客の財務情報を守るための統制をどう構築しているかを検証します。SSAE 18という基準に基づき、企業の管理手法を広範囲にチェックします。
SOC 1レポート:Type IとType II
Type Iは特定の時点での企業統制の設計状況を確認し、Type IIは実際の運用期間で統制がどの程度有効だったかを評価します。
SOC 1に合格するための主なポイント
このように、財務温度を正確に保つためには、企業全体としてSOC 1基準にのっとった管理態勢を確立し、継続的に改善していくことが求められます。
SOC 2は、企業が顧客データをどう管理し、処理し、守るのかを大枠で整理するフレームワークです。以下、主なポイントを簡潔にまとめます。
Trust Services Criteria(TSC)の柱
SOC 2準拠で求められること
これらを実行し、監査人による定期的なチェックを通じて、SOC 2に準拠し続けることが企業の信用度を高めるカギとなります。
SOC 3の概要
SOC 3は、企業のセキュリティ体制を簡潔にまとめ、誰でもわかるように公開するための仕組みです。SOC 2同様にTrust Services Criteria(TSC)を使いますが、詳細な検証結果までは含まず、よりオープンなレポートを作成します。
以下のステップによって運用されます。
SOC 3レポートの構成
SOC 3のレポートは、大まかなシステム概要と監査人の結論、企業の主張、そして必要に応じた補足的な情報で構成されます。SOC 2よりもシンプルで、外部公開しやすい形式が特徴です。
言い換えれば、企業が「守りを怠っていない」ことを外部に示したい場合、SOC 3はシンプルかつ有効な手段となります。
SOCの認証を得るまでのプロセスは複雑に感じるかもしれませんが、大まかなステップを知っておけば対策を講じやすいです。
1. SOCの種類を理解する
まずSOC 1、SOC 2、SOC 3のいずれが自社に必要かを見極めます。財務報告に直結するならSOC 1、セキュリティ強化が主目的ならSOC 2、広く公開向けにはSOC 3など、ニーズに合った選択が大切です。
2. 監査準備
次に、自社が現在行っている統制状況を洗い出し、ギャップがないかを確認します。必要に応じてコンサルタントを活用し、監査前の準備を整えるのも有効です。
3. 監査の実施
外部の公認会計士などがシステムと統制をチェックし、SOC基準にどの程度適合しているかを審査します。ここで指摘された不備は修正が必要です。
4. 修正対応
監査結果で発見された問題点やリスクに対して改善を行います。一部の修正には時間やリソースが必要ですが、SOC認証を得るうえで欠かせない工程です。
5. 認証取得
最終的に監査報告書を提出し、基準を満たしていると確認されればSOC認証の取得となります。認証は継続的メンテナンスが必要なので、定期的な再監査も視野に入れましょう。
SOC監査は、企業が定められた統制基準を満たしているかを客観的に確認するための重要な手順です。第三者の監査人が、システムの設計や実装、運用状況に問題がないかを徹底的に調べます。
監査フロー
初期段階では、セキュリティ方針や運用ドキュメントなどを確認し、続いてテストやインタビューを行います。終了後には詳細な監査報告書が作成され、問題点や評価がまとめられます。
監査の分類
SOC 1は財務報告関連、SOC 2はセキュリティ全般、SOC 3は一般公開用の要約版というように、それぞれ監査の目的と範囲が異なります。
監査人の役割
監査人には公正な立場で統制を評価する責務があります。最終的に発行するレポートは、顧客やステークホルダーが企業を信頼するための重要な判断材料となります。
SOCが注目される理由を、わかりやすい事例で考えてみましょう。
資産運用を行う企業が外部のデータ解析サービスを利用するとき、財務データの正確性が肝要です。ここで重要になるのがSOC 1です。外部サービスを提供する側がSOC 1を取得していれば、財務情報が安全に扱われると示せます。
医療機関が患者情報をクラウドに保管するとき、SOC 2に準拠したサービスかどうかが選定基準になります。SOC 2準拠なら、セキュリティやプライバシー管理がしっかりしている証拠なので、医療機関も安心してサービスを利用できます。
オンラインショップがSOC 2認証を取得したうえで、一般公開のためにSOC 3を用意している場合、ユーザーは「このサイトはデータを守るための対策がしっかりしている」と一目でわかるメリットがあります。
このように、SOCの各レポートは業種や用途に応じて使い分けられ、企業の信頼獲得に役立ちます。
SOCだけがセキュリティのすべてではありません。ISO 27001、NIST、PCI DSSといった他の著名なフレームワークとの違いを概観してみましょう。
SOCとISO 27001
ISO 27001は、企業全体のセキュリティ管理体制を構築・運用するための包括的な規格です。一方でSOCは、サービス提供企業の内部統制を示すレポートを通じて、財務に関連する部分(SOC 1)や、一般的なシステムの管理状況(SOC 2、SOC 3)に焦点を当てる点が特徴です。
SOC | ISO 27001 | |
---|---|---|
対象 | サービス企業の財務統制/セキュリティ統制 | あらゆる業種・規模の企業 |
主な焦点 | 財務報告/データ信頼性 | セキュリティマネジメント全般 |
証明形態 | 監査に基づくレポート | 認定機関による正式な認証 |
SOCとNIST
NISTはコントロールやフレームワークを自由に組み合わせられる柔軟性が強みです。一方、SOCはTrust Services原則に基づく監査レポートを取得する形で、適合性を示します。いずれも企業のセキュリティ強化には有用ですが、着眼点や運用アプローチが異なります。
SOC | NIST | |
---|---|---|
特徴 | 監査ベースで適合性を示す | 各企業で柔軟にカスタマイズ可能 |
主眼 | 財務報告やTrust Servicesの遵守 | サイバーリスクの特定と低減 |
SOCとPCI DSS
PCI DSSはクレジットカード情報を扱う企業向けの厳格なセキュリティ基準です。SOCは財務統制やデータ保護全般を扱い、PCI DSSは支払いカードデータの保護に特化する形で役割が分かれています。
SOC | PCI DSS | |
---|---|---|
主目的 | 財務/データ統制の証明 | クレジットカード情報保護 |
適用範囲 | サービス提供企業 | カード情報を扱うすべての事業者 |
要するに、企業がどんなデータを扱い、どのような法令や規制要件を重視するかで導入すべきフレームワークは異なります。SOCの強みを活かしつつ、他の規格との併用を検討してください。
ここでは、Infrastructure Oversight Controls(IOC)とも呼ばれるIOC 1、IOC 2、IOC 3に関するよくある質問を整理しました。
IOC 1、IOC 2、IOC 3とは?
IOCはInfrastructure Oversight Controlsの略で、Service Organization Control(SOC)と似たような監査ガイドラインを示します。企業が高度なデータ管理とプライバシー基準を守っているかを証明するために使われます。
IOC 1、IOC 2、IOC 3の違いは?
IOC 1は財務報告に直接影響を与える内部システムに重きを置き、IOC 2はセキュリティやデータの完全性、機密性、可用性、プライバシーまで範囲を広げます。IOC 3はIOC 2の結果をシンプルに公開する形でまとめたものに近いです。
IOCを取得すべき企業は?
顧客データを扱うクラウド企業、データベース運用者などが対象になります。
IOCコンプライアンスの取得方法
NAAUS認定の専門家による監査を受け、実際のシステムと運用を評価してもらいます。その監査結果をもとに合否が決まります。
IOC準拠のメリット
データセキュリティへの真摯な姿勢を示し、顧客や取引先の信頼を高めるうえ、自社のリスク発見・改善に役立ちます。
非遵守の代償は?
信用失墜や賠償トラブルなど、大きなリスクを伴う可能性があります。
IOC監査の頻度
一般的には年1回程度が目安ですが、状況に応じて変化します。
監査なしでIOC準拠と言える?
いいえ。必ずNAAUS認定の専門家による監査が必要です。
監査人の役割
外部監査人が企業の管理プロセスを評価し、最終レポートを作成します。
以上がIOCに関する主なQ&Aです。顧客データを扱う企業であれば、IOCの価値をしっかりと把握しておく必要があります。
SOC 1からSOC 3に至るまでのガイドラインは、データの守りと運用管理を一貫して支えるものです。もしこれらを無視した場合、どのようなリスクが生まれるのでしょうか。
経済的リスク
SOC基準を軽視すると、監査機関から高額な罰金を科される可能性があります。データ漏洩を起こして顧客が離れてしまえば、売上や評判も大きく損なわれるでしょう。復旧コストや賠償リスクも大きな負担です。
評判の低下
顧客やパートナーは、セキュリティに問題がある企業との取引を敬遠します。一度失墜した信用を回復するのは簡単ではありません。
法的トラブル
SOC違反やデータ侵害があれば、訴訟や行政処分の対象になり得ます。最悪の場合は業務停止に追い込まれる可能性も否定できません。
業務への支障
インシデント対応やシステム再構築に追われ、日常業務が滞るリスクがあります。
データ侵害のリスク増大
不十分な対策であれば、攻撃者の標的となりやすく、深刻な被害を招きかねません。
まとめると、SOCコンプライアンスを軽視すると財務的、法的、評判、セキュリティなど多方面にわたる重大リスクを抱える可能性があります。コンプライアンスを正しく守る重要性はここからも明白です。
セキュリティ情勢が刻々と変わる中、SOC 1、SOC 2、SOC 3の基準を一度満たしただけでは十分ではありません。常に監査や評価を行い、対策をアップデートすることが不可欠です。以下でポイントを紹介します。
継続的な取り組みの意義
一時的に基準をクリアしても、脆弱性や運用の乱れがすぐ生じる可能性があります。コンプライアンスは長期的な運用計画として考え、定期的に見直す姿勢が重要です。
継続遵守のための具体策
コンプライアンス管理ツールの活用
監査計画や文書管理を自動化できるシステムを導入すれば、ヒューマンエラーを減らし、監査の準備や記録保管を円滑に進められます。下表は管理ツール活用のメリットです。
管理ツールなし | 管理ツールあり |
---|---|
監査日程の手動調整が大変 | 事前登録で自動リマインド |
コンプライアンス状況の把握が難しい | ダッシュボードで進捗を即座に確認 |
文書紛失やバージョン管理が不安定 | オンラインで最新版を一元管理 |
まとめ
SOCコンプライアンスを長く維持するには、監査や監視、教育、規程のアップデート、ベンダー管理など多岐にわたる作業が必要です。これらを一元的に運用できる仕組みを備えれば、企業はセキュリティと信頼性を高めながら、柔軟に外部要件に合わせて進化し続けることができます。
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